ピコピコガッコン日記 ~なつかしい平成ドリンクの思い出~ 第二回:中学生編「ジョージア・マックスコーヒー」

ピコピコガッコン日記 ~なつかしい平成ドリンクの思い出~

この記事は、クレボに通う利用者が、懐かしいドリンクとそれにまつわる思い出を綴る備忘録です。

目次

早く「大人」になりたい

中学生になった私は、焦っていました。
早く「大人」になりたかったからです。

中学校に入学しても、相変わらず調子はずれだった私は、家庭や学校を窮屈に感じていました。

早く自由になりたいと思っていましたし、なにより、あの「必殺前歯(ヒッサツマエバ)」が持ちギャグだったタブチも、プレイステーションのソフトを返してくれないミサトちゃんも、きゅうに前髪や教室の反対側ばかり気にするようになって、私のおふざけに付き合ってくれなくなりました。

このままでは、置いて行かれてしまいます。
私は、「普通の大人」になるために計画を立てることにしました。

現在では「厨二病」「黒歴史」などの言葉がありますが、当時はまだネットスラングの域を出ておらず、思春期の心の揺れや、独特の美学を表現する語彙は少なかったように思います。

とにかく、「大人」を目指すほど「大人ではない」ことの証明になってしまうような、空回りの「大人計画」をスタートさせました。

まず取りかかったのは、「缶コーヒーを飲む」ことでした。

「大人計画」始動

大人といえば「缶コーヒー」です。
なにしろ、ほぼオジさんしか飲んでいないし、三本指でつまめるサイズもシブいです。缶が小さいので、まるで自分が大きくなったかのように感じられました。

ドキドキして飲んでみると、味は意外にも甘ったるく、スチール缶のツンとした香りが鼻に広がります。
初めて缶コーヒーを買った日は、カフェインと興奮のせいか、なかなか眠れませんでした。

しばらくしてカフェインに慣れてしまえば、今度は飲まないと落ち着かなくなり、ついには色々なメーカーの缶コーヒーを買って比較するようになりました。
味を比較するのではなく、いかに「大人」な気分になれるかが重要でした。

スティービー・ワンダーと大人っぽい先輩

最初のお気に入りは、キリンFIRE(ファイア)でした。当時のCMは、歌手のスティービー・ワンダーさんが出演し、自身の曲を熱唱するという大胆なもので、すっかり感動してしまったからです。

しかし、それで十分に満足していた私を一変させる事件が起こります。
いつも学校で噂の大人っぽい先輩が、見たこともない缶コーヒーを飲んでいたのです。

その缶コーヒーは、定番サイズよりヒョロリと長く、黒と黄色のシンプルながらもダイナミックなデザインが特徴的でした。涼しい顔で人と違うことをやってのける・・・これこそが大人です。

早速、先輩に「それ、どこで買ったんですか?」・・・とは聞けるはずもなく、記憶をたよりに街の自動販売機を探し回りました。

「ジョージア・マックスコーヒー」とは?

「ジョージア・マックスコーヒー」といえば、甘い缶コーヒーの代表です。

はじめは関東限定で発売され、その甘さと独特の風味で多くのファンを獲得しました。
通常の缶コーヒーよりも多くの砂糖と練乳を使用していて、エネルギー補給にぴったりです。

黒と黄色の模様が特徴的なパッケージは、一目でマックスコーヒーとわかるデザインです。

長い間、関東や一部の地域のみで販売されていましたが、2000年代に全国展開されてから、どこの地域でも楽しむことができるようになりました。

大人にも甘いものが必要

無事に「ジョージア・マックスコーヒー」を入手した私は、飲む前から達成感で満たされていました。
プルトップを持ち上げれば、気分はもう「大人」です。

肝心の味は、とにかく甘いです。
甘味を引き立たせるために苦味を加えているのかと思うほどで、缶コーヒーを飲みすぎて味覚が麻痺していても、後頭部までジーンと染みわたるようでした。
どうも「大人」は、子ども以上に甘いものを欲しているのかもしれません。

さて、この「大人計画」は唐突に終わりを余儀なくされます。
毎日、何本も缶コーヒーを飲んでいたら、胃を悪くしたのです。
吐き気が止まらなくなったので、パッタリと飲むのをやめてしまいました。

結局、タブチは持ちギャグを封印して忘れてしまったし、ミサトちゃんはロックマンDASH(ダッシュ)のソフトを返してくれないまま中学を卒業していきました。

そして、早く大人になりたかった私は、一生分の缶コーヒーを飲んでしまったので、もう飲まなくなりました。

当時と変わらない「ジョージア・マックスコーヒー」を自動販売機で見かけると、あの時の、空回りだけれど一生懸命だった気持ちを思い出すことができます。


高校生編』へつづく

目次