アイして~るアイスクリ~ム:サーティワンアイスクリーム編
恋愛小説
この記事を書くにあたり、インターネットでアイスクリームについて調べました。
すると、この世には美味しいアイスクリームについてのブログ記事がたくさんあることがわかりました。
そこで今回は、少し趣向を変えてみようと思います。
このブログは「アイスクリ~ム」を「アイして~る」ことを語るためにはじめたので、まるで恋愛小説のようにしてみるのも面白いのではないかと考えました。
それでは、恋愛小説風『アイして~る、アイスクリ~ム』をお楽しみください。
夕暮れの合図
アラームが鳴り、スマホを見るとたくさんの通知が目に入った。
今日中に返事をしなければならないメールや、修正が必要なデータを思い出し、まったく気乗りしていない自分に気づく前に、起き上がらなくてはならなかった。
滅茶苦茶になっているデスクからノートパソコンを引っ張り出し、そのまま喫茶店へ向かう。
壁掛け時計
危ないところだった。
あと一度でもまばたきをしていたら、今日は何一つ手をつけなかっただろう。
マスターから迷惑そうな視線を浴びても、目覚ましのためのコーヒーを一杯だけ飲んで、作業が終わるまでは、店から出られないルールとした。
ルールであれば守れるのだから、なかなか健気なところがある。そう自分を甘やかしていたら、あっという間に、時計は閉店時刻をさしていた。
カップル
隣席のカップルは、有料老人ホームから外出してデートを楽しんでいるらしく、どうやら夫婦ではなさそうだった。
私も含め、店内の誰もが、つい聞き耳を立ててしまうほど熱々だった。
彼女の携帯電話が鳴り、彼氏が声をひそめて「誰か亡くなった?」と聞いたのが印象的だった。二人は、老人ホームの門限を破っているらしかった。
作業はほぼ片付いていたので、残りは明日の朝にやることにして、喫茶店を後にする。
エネルギー補給
先程のカップルも、きっと、ちゃんと老人ホームに帰るだろう。
野次馬根性が最後のダメ押しとなり、私の脳のエネルギーはほとんど底を尽きたようだった。
右足と左足を交互に動かせば家には辿り着けるだろう。しかし、あまりにも頭がぼーっとしている。
ここはひとつ、甘いものでエネルギー補給しながら帰りたい。あっという間にもう、こんな時間だし、親も年だし、大黒摩季世代なのだし。
帰り道にあるセブンイレブンで三ツ矢サイダーを買うか、その先のサーティーワンでシェイクを買うか。
この決断さえするエネルギーが残っておらず、ずるずるとサーティーワンまでたどり着いてしまった。
何も考えずに「シェイクください」とだけ言い、ショーケースを指差した。
サーティーワンのシェイク
気の利く店員さんがフレーバーを読み上げてくれたけれど、店内のBGMに集中して、聞かないように努めた。シェイクが出てくるまで、どのフレーバーなのか答え合わせをしないつもりだった。
繰り返すけれども、私には返事をするエネルギーも残っていなかったので、コクリと頷くだけで、シェイクができあがるまで店内の端っこで待つことにした。
ハッキリ言って適当に指をさした。
どうも、通常はあまりシェイクにしないフレーバーを選んでしまったことは、店員さんの表情から感じとることができた。
ダイキュリーアイス
サーティーワンのアイスクリームを、シェイクにしてもらえるなんてことを知ったのは、本当に最近だった。
定番はチョコミントフレーバーで、おそらくこれが一番人気のはずだ。これを注文すれば、かならず満足できることはわかっている。
しかし、そうしなかったのは、あのカップルの影響のような気もした。
帰ろうが帰るまいが、誰と、何処へいこうが、その刹那に決めればいい。
手渡されたシェイクは、透明のプラスチックに入っていて、フレーバーが一目瞭然だった。事前に店先で、夏季限定のメニューは予習済みだ。
薄い水色が透けるカップを受け取り、もうこのギャンブルには負けた気になっていた。
このブルーは、ダイキュリーアイスに間違いない。
蛍光ブルーが涼しげな、ラムの風味と酸味がいかにも夏らしいフレーバーだ。
しかし、たしかダイキュリーアイスはシャーベット系だったはず。シャーベット系のフレーバーをシェイクにしてもらったことはなかった。
シェイクというくらいだから、おそらくミルクをくわえているはず。私の感覚では、シャーベット系でミルクに合わせるのはメロンフレーバー以外には考えにくい。
シャーベット系シェイク
とはいえ、ネガティブに考えるなんて、もう流行らないし、大黒摩季が全盛期だったころ、私はまだ子供だったし。
こんなにくたびれた状態でも、シェイクの味を心配している自分が可笑しく感じ、やっとストローに口を付けた。
薄い水色が美しいシェイクを飲み始めると、これが意外にも癖になる。
これはまるで、お洒落なバーで出てくる謎のカクテルみたいだ。
液体になることでラムの風味が際立ち、シェイクならではのコクはカルーアミルクを思わせる。酸味はまるでヨーグルトのように後を引く。
覚醒
目論見どおり、シェイクによって、ぼーっとしていた頭が覚醒しはじめた。
しかし、これでは今夜も眠れそうにない。
明日の朝のために、アラームの設定は必須に違いなかった。
おわりのはじまり