Life on a long and winding road.「長く曲がりくねった道の上の人生」vol.6
第10章:──そして誰もいなくなった──
実家を勘当され、会社を辞め、再び日雇い派遣の生活に戻ることになりました。 平日は、騒音と振動が体にこたえる建築現場で働き、洗濯はコインランドリー、風呂は銭湯、夜はネットカフェの薄暗い照明の下で眠りにつきました。頼れる人は誰もおらず、孤独感は募るばかりでした。しかし、自由な働き方という側面に、どこか安堵感を感じていたのも事実です。
しかし、その自由は、心身に大きな負担をかけていました。建築現場では、怒声が飛び交い、人間関係もギスギスしていました。不安定な収入と過酷な労働環境に、精神は徐々に蝕まれていきました。心療内科に通いたい気持ちもありましたが、働かなければ診察代も薬も手に入らず、その悪循環から抜け出すことができませんでした。
以前は、満員電車のわずかな揺れすら耐えられたのに、人ごみの中に入るのが怖くなり、電車に乗ることもできなくなりました。実家に助けを求めようとしても、門前払い。途方に暮れ、電車移動のない場所で仕事を探しましたが、薬を服用していなかったため、集中力が続かず、長く働くことが困難でした。
何日も食べ物を口にしていなかったため、体中が飢餓に苛まれていた。近くの公園で水を飲み、たまたま見つけた野生の熟れた桑の実をつまみながら、必死に生き延びようとした。かすかな意識の中で、何が一番大切なのかを必死に考えようとした。栄養を摂り、病院で治療を受けることが最優先だと考えましたが、今の状態では働くことができませんでした。
寝泊まりは主に公園のベンチ。何度も警官から職務質問を受けて場所を移動させられました。何度か話をしてみましたが警察は民事不介入が鉄則なので取り合っては貰えません。
どんなに飢餓に苦しんでいても、どんなに追い詰められていても、窃盗などの犯罪だけは絶対に犯すことはできない。一度犯してしまえば、その傷跡は一生消えることはない。戸籍に刻まれる犯罪歴は、私の人生の汚点となり、決して拭い去ることのできないものとなるだろう。
恥ずかしながら、お金を借りるために、手元の携帯電話のアドレス帳から仲の良かった友人に公衆電話から連絡しました。ほとんどの人には断れましたが、1人だけ承諾してくれました。昔の職場でその人がお金が無い時に自分が焼肉や居酒屋に連れて行ったこと、そして彼の結婚式に出席したことを思い出してくれたようで、思わず涙がこぼれそうになりました。
※現在は2012年の労働者派遣法改正1により、日雇い派遣が原則禁止となり、派遣労働者の雇用が安定する方向に大きくシフトしました。最新の改正では2021年4月に労働者派遣法が大きく改正されました。
飢餓状態で働けなくなった経験で学べた事
1. 人生の基盤の大切さ
- 家族の大切さ: 実家を勘当されたことで、頼れる人がいなくなり、孤独感を深く味わいました。家族の支えがいかに大切かを痛感させられます。
- 健康の大切さ: 体調を崩し、働くことができなくなったことで、生活が困難になった経験から、健康の重要性を認識できます。
- 社会とのつながりの大切さ: 友人の助けによって窮地を脱出できたことから、人間関係の重要性、特に困った時に助けてくれる人の存在の大切さを学びます。
2. 精神的な強さ
- 逆境を乗り越える力: 厳しい状況下でも、希望を失わずに生きようとする強い意志を感じることができます。
- 倫理観の大切さ: どんなに追い詰められても、犯罪に手を染めないという強い倫理観を持っていることがわかります。
- 感謝の心: 過去の親切を忘れず、恩返しをしようとする心は、見習うべき点です。
- 最悪の手段を取らなかった:現実から逃げずに自ら命を絶とうとしなかった。
3. 生活の知恵
- 自助努力の大切さ: 自分の力で何とかしようと努力する姿から、自助努力の大切さを学びます。
- 資源の有効活用: 少ない物資で生活する方法を身につけることで、生活の知恵を身につけることができます。
4. 人間関係の大切さ
- 助け合いの精神: 困っている人を助けたり、逆に助けられたりすることで、人間関係の大切さを学びます。
- 信頼関係の構築: 過去の行動が、後の信頼関係に大きく影響することを学びます。
5.まとめ
この経験から最も大きな教訓は、どんな状況でも、人間としての尊厳を忘れずに、希望を持って生きることの大切さでしょう。困難な状況に直面した時、私たちは自分自身の強さや、周りの人とのつながりの大切さを改めて認識します。この経験は、大きな成長の機会となり、将来をより良い方向へと導く力になったのではないでしょうか。
- 逆境は必ず乗り越えられる: どんなに困難な状況でも、諦めずに努力すれば、必ず道は開ける。
- 人間は一人では生きていけない: 周りの人とのつながりが、生きていく上でいかに大切か。
- 感謝の心を忘れない: 何かを与えられたら、必ず感謝の気持ちを伝えること。
- 自分自身を大切にする: 健康や精神的な安定を保つことが、豊かな人生を送るために不可欠。
第11章:ゼロからやり直す
こうして九死に一生を得た自分は、すぐにメンタルクリニックへ通院しました。以前、通院していたクリニックは休診日だったので、別のクリニックへ。
クリニックの洗面台の鏡で自分自身の姿を見ると、体も頬も痩せこけて髪はボサボサで髭が伸びっぱなし。
「初診の結果、統合失調症2という診断になりました。この病気は治療によって良くなっていく病気です。まずは、この書類を持って役所で手続きをして、福祉サービスを利用できるようにしましょう。今日からデイナイトケアに通っていただくことになります。デイナイトケアでは、食事の提供だけでなく、他の患者さんとの交流や、病気について学ぶ機会もたくさんあります。」
…実際はもっとぶっきらぼうな言葉でしたが、敢えて優しい言葉使いに修正しました。
今まで耳にした事はありませんでしたが、こうしてデイナイトケア3とやらに通う事になりました。
診察後に案内されて同建物内のフロアへ行くと、大勢の人が居ました。 こんなに多くの精神疾患を抱える人がいるとは思いませんでした。
手持ちがなかったので、誘われた喫煙室で久々に人と話しました。
喫煙室で色々な人と会話をすると統合失調症・パニック障害・うつ・双極性障害・パーソナリティ障害… 実に様々な病気の方が居ました。「そうか、自分だけじゃないんだ。」当時は孤独を感じていて、病気のことや自分がどうしたいのかわからずにいました。孤独感が解消されたのかどこか安堵しました。
この日は、1カ月半ぶりにまともな食事をとることができ、少しホッとしました。
家を飛び出す際に持っていたかばんの中には、ポータブルCDプレイヤーや数枚のお気に入りのCD、お薬手帳、保険証のほか、ノートとペン、ボロボロになった財布、着替え、作業着、そして工事現場で働いていた頃の安全帯やヘルメットなどが入っていました。
この日は目まぐるしく環境が変化したのか福祉で用意された簡易宿泊所4で早々と眠りにつきました。
デイナイトケアで学んだ事
1.精神疾患に関する学び
- 統合失調症は治療できる病気である: 統合失調症という診断を受け、治療の重要性を認識しました。
- 精神疾患を抱える人は自分だけではない: 多くの精神疾患を抱える人々と出会い、孤独感が解消されました。
- 様々な種類の精神疾患がある: 統合失調症だけでなく、パニック障害、うつ病など、様々な精神疾患があることを知りました。
- デイナイトケアの存在: デイナイトケアの存在を知り、食事の提供や他の患者さんとの交流など、様々なサービスがあることを知りました。
2.自己に関する学び
- 自分の状況を客観的に見れるようになった: 鏡に映る自分の姿を見て、自分の状況を客観的に捉えることができました。
- 助けを求めることの大切さ: メンタルクリニックを受診し、福祉サービスを利用することで、自分の状況を改善しようとする行動を起こしました。
- 社会とのつながりの重要性: 他の患者さんとの交流を通して、社会とのつながりの大切さを実感しました。
- 自分の強み: ポータブルCDプレイヤーやノートなど、自分の好きなものややりたいことを大切にする気持ちがあることを改めて認識しました。
3.その他
- 福祉サービスの利用: 福祉サービスの利用によって、生活の安定を図ることができました。
- 環境の変化への適応力: 短期間で環境が大きく変化する中でも、新しい生活に適応しようとする力が身につきました。
4.まとめ
- 精神疾患は決して一人で抱え込むべきものではない: 助けを求めることは恥ずかしいことではなく、むしろ積極的に行うべきことである。
- 周りの人とのつながりが大切: 周りの人との交流を通して、心の支えを得ることができる。
- どんな状況でも希望を捨てずに生きていくこと: 困難な状況でも、前向きに生きていくことが大切である。
…to be continued
脚注
- 労働者派遣法改正とは、労働者派遣事業に関する法律である「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」が、社会情勢の変化や労働環境の変化に対応するために、定期的に見直され、内容が変更されることを指します。
↩︎ - 統合失調症とは、脳の機能に異常が生じることで、現実と異なる認識や思考、感情、行動が現れる精神疾患です。罹患率は100人に1人と言われています。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。
幻覚: 実在しないものを見たり、聞いたり、感じたりする。
妄想: 根拠のない確信を持つ。
思考の混乱: 考えがまとまらず、支離滅裂になる。
感情の鈍麻: 喜怒哀楽の感情が感じられなくなる。
意欲の低下: 何をするにもやる気が起きない。
これらの症状は、人によって現れ方や程度が異なります。また、統合失調症は、遺伝的な要因や環境的な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
統合失調症の原因
統合失調症の正確な原因は、まだ完全には解明されていませんが、脳の神経伝達物質のバランスが崩れることや、脳の構造的な異常が関与していると考えられています。
統合失調症の治療
統合失調症の治療には、薬物療法、精神療法、社会復帰支援などがあります。
薬物療法: 幻覚や妄想などの陽性症状を改善する薬や、意欲の低下などの陰性症状を改善する薬などが用いられます。
精神療法: 患者さんが抱えている不安や悩みを話し、心の状態を安定させることを目指します。
社会復帰支援: 職業訓練や生活訓練などを通じて、社会復帰を支援します。
統合失調症と日常生活
統合失調症は、適切な治療を受けることで、社会生活を送ることができるようになります。しかし、症状の波があり、再発することもあります。そのため、治療を中断せず、医師や精神保健福祉士などの専門家の指導のもと、規則正しい生活を送ることが大切です。
↩︎ - デイナイトケアとは、精神疾患を抱える方が、社会復帰に向けて取り組むための場所です。デイケアの一種で、通常のデイケアよりも長時間、施設で過ごすことで、より集中的な支援を受けることができます。
↩︎ - 簡易宿泊所とは、宿泊場所を多数人で共用する構造や設備を備えた宿泊施設のことです。
プライバシーが保てない: 個室がないため、プライバシーを重視する人には不向きな場合があります。
アメニティが不十分: ホテルのような充実したアメニティが用意されていない場合があります。
騒音が気になる: 共用スペースがあるため、騒音が気になる場合もあります。 ↩︎
※この内容は個人の経験及びAIの回答に基づいています。正確な情報や治療については、必ず専門家にご相談ください。