Life on a long and winding road.「長く曲がりくねった道の上の人生」vol.7

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⑬新たな問題

デイナイトケアに通って福祉の制度を利用してからは、痩せこけていた体も少しずつ回復してきました。しかし、新たな問題に直面することになります。

私が住んでいた簡易宿泊所は、線路際に建っていました。電車が通るたびに、建物が揺れるのが感じられました。八人相部屋は、薄いカーテン一枚で仕切られているだけ。プライバシーなど、とうてい期待できるものではありませんでした。

2階には八人相部屋が6つ、1階には管理人室と個室、そして有料のシャワー室がありました。毎晩、宴会騒ぎや喧嘩の音が響き渡り、不眠に悩まされました。初めて睡眠導入剤に頼らざるを得なくなった夜は、「まだ薬が増えるのか…」と絶望感に打ちひしがれました。廊下の延長コードは全室で共有のため、携帯電話の充電時は盗難防止のため、常にロックをかける必要がありました。

一番の問題は、金銭だけでなく、薬の窃盗が頻繁に起こっていたことです。さらに、南京虫1の被害にも遭いました。
簡易宿泊所でも全室の消毒の対策は行いましたが、一度発生してしまうと根絶するのは困難です。

福祉事務所に相談したところ、アパートへの移転は段階的にしか難しいとのことでした。結局、近くの別の簡易宿泊所に引っ越しをすることにしました。前は門限はありませんでしたが、今度は夜は9時になると出入りは出来ませんでした。こちらも部屋の仕切りはカーテンのみでプライバシーは皆無でしたが、前ほどの騒音はなく、しばらくはこちらで過ごすことにしました。

XⅢ.劣悪な環境で学べたこと

1.簡易宿泊所の現状と課題

  • プライバシーの欠如: 薄いカーテンで仕切られただけの部屋は、プライバシーが全く確保されていません。
  • 騒音問題: 宴会騒ぎや喧嘩など、毎晩のように騒音が発生し、睡眠に大きな影響を与えています。
  • 治安の悪さ: 金銭や薬の窃盗、南京虫の発生など、治安が悪く、安心して暮らすことができません。
  • 施設の老朽化: 全室の消毒が困難な状況にあるなど、施設の老朽化が問題となっています。
  • 規則の厳しさ: 門限が設けられているなど、自由な生活を送ることが難しい場合があります。

2.福祉制度の利用と課題

  • 福祉制度の限界: 福祉事務所に相談しても、アパートへの移転は段階的にしか難しいなど、即座に状況が改善されないことがあります。
  • 新たな問題の発生: 福祉制度を利用することで、健康状態は改善されたものの、新たな問題に直面するケースもあります。

3.私の心情

  • 絶望感: 睡眠導入剤に頼らざるを得ない状況に陥り、絶望感を抱いています。
  • 不安感: 金銭や薬の窃盗、南京虫の発生など、常に不安を感じながら生活しています。
  • 孤独感: プライバシーが確保されない環境で、孤独を感じている様子が伺えます。

4.まとめ

  • 福祉制度の限界: 福祉制度は、生活困窮者を支援する上で重要な役割を果たしますが、全ての問題を解決できるわけではありません。
  • 住居の重要性: 住環境は、心身に大きな影響を与えます。安全で快適な住居を確保することは、生活の質を大きく向上させるために不可欠です。
  • 社会問題の複雑さ: ホームレス問題や貧困問題など、社会問題の解決は容易ではありません。多角的な視点から問題を捉え、様々な主体が協力して取り組む必要があります。

⑭診察とは…

デイナイトケアに通院を開始し、新たな課題に直面しました。まず、服薬管理の徹底は私にとって大きな負担でした。AM9:00からPM8:00までの長時間、人混みが苦手な私は、多くの参加者の中で過ごすことに強いストレスを感じました。

次に、体調不良時の対応にも疑問を感じます。風邪をひいて欠席した場合、職員の方が自宅まで薬を持ってきてくださるなど、過剰なケアに戸惑いました。邪推すると医療報酬の為?あるいはクリニックの方針なのでしょうか?

また、診察時間の短さも大きな問題でした。主治医の先生との面談は、エレベーターでの短い会話がほとんどで、時間にして30秒程度。果たして私の状態を十分に理解してもらえているのか不安です。

さらに、デイナイトケアのプログラム中に、院長とその息子による職員へのパワハラと思われる言動を目にすることがありました。院長は、職員のミスに対して大声で怒鳴り散らし、人格を否定するような言葉を投げかけていました。私は幼少期から父親の怒号に怯えて育っていたので、院長の言動に強い嫌悪感を感じ、フラッシュバックしてしまうことがありました。

しかし、デイナイトケアで仲良くなった友人との交流は、私にとって心のオアシスでした。悩みを打ち明け、共感してもらうことで、気持ちが楽になり、前向きに考えることができるようになりました。接客業が長かった私は話しかけやすかった雰囲気らしく、フロア内で色々な人が話しかけてくれるようになりました。

このまま甘んじてはいけないと感じるようになり、より積極的に自分を変えたいと思うようになりました。そこで、どのような支援制度があるのか、友人の助言を得ながら、ネットカフェのPCで情報収集を開始しました。少しずつ前を向けるようになり、心身ともに回復に向かっています。今思えばデイナイトケアに通院することで、様々な人と交流する機会を得ることができ、それが一つの治療法だったのかもしれません。私の様に孤独な身で居場所もない人にとっては、デイナイトケアは必要な受け皿だったのでしょう。

XⅣ.デイナイトケアに通院して学べたこと

1. デイナイトケアに関する学び

  • 服薬管理の重要性と負担: デイケアにおける服薬管理の厳格さ、そしてそれが利用者にとっては大きな負担になる可能性があることを示しています。
  • 体調管理の難しさ: 体調不良時の対応について、利用者と施設側の間にギャップがある可能性を示唆しています。
  • 医療者とのコミュニケーションの重要性: 診察時間が短く、十分なコミュニケーションが取れないことによる不安感が描かれています。
  • 施設内の人間関係: パワハラなど、施設内の人間関係が利用者の心に大きな影響を与える可能性が示されています。
  • 交流の重要性: 他の利用者との交流が、心の支えとなり、回復に繋がる可能性を示しています。

2. 心理的な側面に関する学び

  • 過去の経験の影響: 幼少期の経験が、大人になっても心の傷として残り、新たな状況での反応に影響を与える可能性を示しています。
  • 孤独感と人間関係の重要性: 孤独感が、心の健康に大きな影響を与える一方で、人間関係が心の支えとなることを示しています。
  • 変化への抵抗と成長: 変化を恐れながらも、積極的に新しいことを始めようとする心の動きが描かれています。

3. 社会的な側面に関する学び

  • 支援制度の必要性: より良い生活を送るために、様々な支援制度が必要であることを示しています。
  • コミュニティの重要性: 共通の悩みを持つ人々が集まる場所が、心の安定に繋がる可能性を示しています。

4.まとめ

デイナイトケアという場所が、利用者にとって様々な意味を持つ場所であることがわかります。それは、医療的なケアを受ける場所であると同時に、人との繋がりを築き、心の癒しを得る場所でもあるのです。また、心の病を抱える人々が抱える様々な困難や、それらを乗り越えようとする心の強さを教えてくれました。

  • 心の病を抱えている人への理解を深める
  • 孤立した状況にいる人への支援の重要性
  • 人との繋がりの大切さ
  • 変化を恐れずに一歩を踏み出す勇気
  • 自分の気持ちを言葉にすることの大切さ

to be continued

脚注

  1. トコジラミは、夜間に人の血を吸う小さな虫で、かつては「南京虫」という名前で広く知られていました。近年、再び増加傾向にあるため、改めて注意が必要な害虫です。 ↩︎
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