Life is survival〜人生はサバイバル〜

第11章:1カ月半を生き延びたサバイバル術
何もかもどうでもよくなってしまったのは、これまでを振り返ってもこの時期が初めてだったと記憶しています。
大学受験を諦めるよう父から告げられ夢を絶たれた時、母が亡くなった時、父が倒れてしまった時、父がうつ病を患った時、弟が不登校の末に高校を中退してグレてしまった時も、私は決して諦めずに解決策や対応策を考え、行動することで結果を出してきました。
しかし、思い返してみると、人のために奔走するばかりで、肝心の自分のケアを怠っていたのです。心療内科にも通えず、ネットカフェで寝泊まりすることさえできなくなり、当初は友人宅を転々としました。でも、いつまでもいられるわけではありません。友人にもそれぞれの生活があるからです。
ある時、シングルファーザーの友人宅に数日間泊めてもらった際、子供に懐かれ「パパと二人じゃ寂しいよ」と言われてしまいました。
その言葉に友人は困惑し、申し訳なさそうに「お父さんと仲直りした方がいい」と促され、渋々実家へ向かったものの、予想通り門前払いをされてしまいました。とはいえ、これ以上友人の世話にはなれないと考え、実家から比較的近い公園で寝泊まりするようになりました。当然、体調は悪化する一方で、いくつもの公園を転々としました。
飢えをしのぐために野生の桑の実でわずかに腹を満たし、喉の渇きは公園の水で潤しました。晴れた日は公園のベンチで、雨の日は雨をしのげる場所で寝ました。父は週3回人工透析を受けていたため、時々実家の留守を見計らい、サッシを壊して窓から忍び込み、作り置きのカレー等の食料を貪り食っていました。髭は伸び放題で、髪はボサボサでした。
一度交番に行ってみましたが、民事不介入が原則とのことで、特に対応してもらえませんでした。度々実家に忍び込み、お金になりそうなものを探しましたが、何も見つかりませんでした。ちょうど忍び込んだ時に、同級生だった友人の母親に見られ、「うちの子は立派にやっているわよ」と説教じみたことを言われました。しかし、恵まれた環境で育った他人にそんなことを言われる筋合いはなく、無言で睨みつけました。

第12章:着メロと恩返し
公園に住み着いてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。ふと、そんなことを考えた。後で聞いた話では、この界隈には縄張りのようなものがあるらしいが、この場所には私一人しかいなかった。とうに解約されたガラケーを、未だにバッグに入れている。充電器があるから、時折そのメールボックスや画像を眺めるのが、その時の唯一の慰めだった。着メロ――今の若い人は知らないかもしれない。自分で音階を入力して好きな曲を着信音にできた時代だ。専門の冊子も売っていた。バッグには他に腰道具、安全帯、作業着、そして何枚かのCD。昔、遅番が終わってから明け方までバカ騒ぎしていた日々が、遠い夢のように思い出された。
電話帳を眺めていると、まだ消せずにいた一人の友人の名前が目に留まった。公衆電話から、残高の僅かなテレホンカードで、何となく連絡してみようと思った。1コール、2コール、3コール……諦めかけたその時、繋がった。勘当される直前にメールをやり取りしていたので、彼の状況はいくらか把握していたが、改めて近況を話した。何しろ、ここ最近は誰とも会話していなかったので、つい食い気味になってしまった。彼は父親の介護のため、今は看護師を目指しているという。「そうか、大変だったね」と相槌を打ちながら、昔、一緒に働いていた時に食事や飲み代を全部出してもらったことを思い出した。「少しだけどお返ししたい。もしよかったら、病院かクリニックで診察を受けた方がいいと思う」。受話器を置くと、結婚式以来の彼の声が、そして子供が生まれたという話が、じんわりと心に響いた。
でも、困っているとはいえ、幸せの絶頂にいる彼に頼ってもいいのだろうか?昔の恩返しと言っても、あの頃彼は役職に就いていて、実家に生活費を入れても金銭的な余裕があったはずだ。確かに飲み会や食事はいつも彼が奢ってくれたが、母を亡くしたばかりで、むしろ救われたのは私の方だったかもしれない。今まで、あらゆるトラブルを誰にも相談せず、一人で解決してきた。今更、人に頼るなんて……。
電話を切ってから、1時間も経たないうちに、携帯電話に信じられない金額の振り込み通知が届いた。「こんなに大金を借りることはできない」とすぐに彼に連絡すると、彼は優しく言った。「昔の恩返しだよ。あの時は本当に助けられたし、これくらいの金額では、とても足りないくらいだ」。情けないけれど、今の私は、彼の言葉に甘えさせてもらうしかない。いつか必ず、この受けた恩は返そうと心に誓った。その日の午後、以前通院していたクリニックへ向かうと、入り口には休診日を知らせる貼り紙があった。そうか、今日は木曜日だったか。さて、この近くに他に心療内科か精神科はないだろうか?近くのインターネットカフェに駆け込み、検索して予約の電話を入れた。
この後については、以前の記事でも詳しく書いた通り、私はとあるクリニックのデイナイトケアに通院することになります。
